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柴崎まどか 個展「Q.veil -クエスチョン.ベール-」

2016.7.26 - 7.31開催

私は真実を知ることができない。

 

 

テレビではニュース番組が流れ、私はぼんやりとスキャンダルを眺める。

ディスプレイ越しに述べられている真実を、疑うことなく日々受け入れている。

 

日々たくさんの人や事象に出会う。

そのすべてを疑わず、ひたすらに信じることはむずかしい。

 

そう思うと真実なんてない気がして、目の前が霞んだ。

 

 

君の言葉を私はどうして真実だと確信できるだろう。

かつて信じられる男がいた。

多くを話し、許し合い、受け入れ合っていると思った。

25歳の誕生日、懲りずに写真を撮り続けてやると私は言った。

それが彼を撮る最後の写真となった。

まだ幼い頃に出会い、十数年経ち、私たちは変わった。

前は普通に話せていたことも話せなくなって、それがいちばん悲しかった。

私たちの間にも真実はないんだと思った。

 

十数年信じていた真実がそうでないとすると、何が真実で何を信じたらいいというのか。

これにはまいった。しばらく途方に暮れた。

 

 

 

真実だの愛だの恋だの、不確かなものを言葉にするのは実に不毛だ。

そうして名前をつけて信じたいのに、裏切られることばかりだ。

宣言どおり懲りずに私は写真を撮り続けているけれど、 もはや写真が真実を写すものではないのは周知だろう。

 

 

 

 

どうして写真を撮りつづけるのか。

霞んだ目で見えるものはなにか。

真実はどこに在るのか。

私の真実をどう伝えればいいのか。

 

大した答えも出せずに途方に暮れる日々だ。

これからもそうして悩み、考え、うろたえ続けるだろう。

 

 

 

 

私は真実を知ることができない。

だけど、どうしようもなく知りたくて、信じたくて、 こうしてまた写真を撮ってみるわけです。

柴崎まどか個展[Q.veil]
柴崎まどか個展[Q.veil]
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